お越しいただいた時点では他社で土地探しをスタートしていたE様。しかし当社でも土地を提案するとスムーズに土地が決まり、いつの間にか当社で計画がスタートしていました。そうして選ばれた土地は、非常に方位の良い分譲地のもっとも南側の角地。こういった良い敷地を手に入れることができたのは、E様のご決断が早かったからに他なりません。(決断に時間がかかり、もっとも条件の良い場所をみすみす逃してしまうお客様もたくさん見てきました・・・)
前述のように非常に方位・日照条件の良い敷地なので、シンプルな間取りを提案しました。条件の良い敷地であるほど、凝った設計は不要です。妙に凹凸させてしまったが故に、冬、窓に自身の影を落とし陽が当たっていないお家が世間にはいくつも建っています。E様のご要望は「1階に客間として使える和室が欲しい」とのこと。なので玄関ホールからLDKを通らずに和室に入れる動線を確保しました。和室とリビングは3枚方引戸で仕切ることが可能です。ダイニングには特大サイズの窓(LIXIL/サーモスX 日射取得型トリプルガラス)を配置し、冬は日の出から日の入りまで終日に渡って日射取得が可能です。ちなみに私は(あくまでどちらかしか選べない場合ですが)、リビングとダイニングであればダイニングの陽当たりを優先に設計することが多いです。理由は、冬の朝、日常生活においてもっとも陽当たりの恩恵を感じるのは朝食時であると考えるからです。私の実家はダイニングが奥まった位置にあり、それ故に冬の朝の朝食時に非常に寒く、わざわざ陽の当たっている別室の窓際に食事を運んで食べた記憶があります。
空調方法は、冬は1階LDKに設置したエアコン、夏は2階の階段ホールに設置したエアコンの2台方式。これらが間取りの工夫によって対流することで、全館に行き渡るよう設計しています。外気温30度を超える初夏に行なった完成見学会では、2階の6帖用エアコン1台だけで1階まで含めた全館が涼しくなっているのをご来場者様に体感していただくことができました。近頃これを見よう見まねで真似をして階段ホールなどにエアコンを提案する住宅会社がいらっしゃるようですが、そういった提案を受けた場合は「なぜその空調設計で効くと言えるのか」、必ず理屈と根拠を確認しましょう。「冷気は下に降りるので~」などといった素人でもわかる程度の説明しかない場合、ほぼ確実に効かないと思ってください。下手をするとエアコンに結露するなどという最悪の事態も起きかねません。当社でも数々のトライ&エラーを繰り返し、数年かけてようやく確立しつつある方式です。安直な真似で成功することはあり得ませんので、注意が必要です。
なおこのお家は太陽光発電だけでなく蓄電システムまで搭載し、耐震等級3と相まってまさに「在宅避難」ができるお家となっています。ただし間違えてはいけないのは投資する順序です。まずは耐震等級3、そして樹脂窓+高気密高断熱(最低でもUA値0.56以下かつC値0.5以下)。蓄電池に手を出すのはそれらがしっかり担保できてからにするべきです。
(コメント: 営業/設計担当 鈴木 基悦)