気密測定 定期報告 30(~透湿防水シートへの直接吹付はあり? その2~)

エスケイハウジングでは、建築させていただくすべてのお家で気密測定を行っております。

先日も、田辺市で建築中の現場にて気密性(C値)の測定を行いました。

結果は 気密C値=0.13 でした。今回も安定の超高気密が確保できております。なお今回は隙間特性値 n値も1.04という、とびっきり良い数値が確保できました。隙間特性値は1.00~2.00の間で示される数値で、1.00に近いほど隙間が分散しており(=良い)、2.00に近づくほど隙間が集中しており大穴が開いている(=良くない)ということを示します。

このn値は全館冷房の空調計画をする場合に非常に大切になる数値であることが経験上わかっており、あるラインを超えてくると全館冷房時に壁内結露を生じるリスクがあることも経験しております。逆に言えば、全館冷房をするのであれば気密測定など当然にやっておくべき必要最低条件であるという意味でもあります。最近は当社のようなホールエアコン方式を見よう見まねで採用している例が散見されますが、マズイ空調計画も数多く見受けられます。確たるロジックの無い全館冷房は確実に失敗します。

今回はその前段階、前回のお話の続きです。

 

筋交い工法+発泡ウレタン断熱=最悪の組み合せ

コロナ禍によるコストアップから耐震パネルをケチり、昔ながらの筋交い工法に戻して苦し紛れのコストダウンを行なう傾向が出てきていることは前回お伝えしました。従来のローコスト住宅などはこれに袋入りのグラスウール断熱材を充填していたので高気密など確保できるはずもなく、寒い家がたくさん建っていました。しかしそれだけならまだ良かったと言うこともできるのです。

というのが、最近はその筋交い工法をベースに断熱材に現場発泡ウレタン(吹付断熱材)を採用する住宅会社が出てきています。10年以上に渡って現場発泡ウレタン断熱材を採用・研究してきた当社から言わせると「筋交い工法+現場発泡ウレタン断熱材は最悪の組み合せ」です。もっと詳しく申し上げると、透湿防水シートへのウレタン直接吹付け、これが最悪の工法なのです。

 

それ、家が腐る可能性がある工法です

透湿防水シートへの直接吹付けはコストのかかる耐震パネルを採用することなく、かつ吹付断熱特有の高気密を確保しやすいという特性と相まって、一見ローコストにそこそこ高性能なお家を建てられる非常にオイシイ方法に見えます。しかしそれをすると現代の住宅工法にとって致命的な問題を引き起こすことになります。それが「ウレタンの発泡によって透湿防水シートが外側に押され、通気層を塞いでしまう」という問題なのです。

こんなマニアックなコラムを読んでいる方ならご存知の通り、四季があり高温多湿なこの国の風土に対応するため、日本の住宅は外壁材を躯体にベタ付けにせず15ミリ程度の隙間(通気層)を設けて施工されます。その隙間を風が走り抜けることで湿気を外に排出し、また夏の日射熱を緩和し排熱しています。しかし透湿防水シートが内側からウレタン断熱材に押されてしまうと、その膨らんだ部分で通気層が塞がれ、通気が通らなくなってしまいます。するとそこに湿気が溜まり、そこから構造体を腐らせることになっていくのです。

極めつけは、実はその施工方法は日本透湿防水シート協会のHPにて「好ましくない施工方法」と明確に表記されています。公に「やめとけ」と言われている工法ということですね。ちなみにこの施工方法が本当にダメなのか、当社で一度実証実験を行なったことがあります。外側に膨らまないように透湿防水シートをなるべくピンピンに張り、さらにウレタンを吹付ける際に外側から板で押さえるのです。ですが結果、見事に膨らんでしまいました。あんなもの、一切膨らまないように施工するなんて絶対に不可能だと思った瞬間でした。

 

やっていいコストダウンとやってはいけないコストダウンがある

もうお分かりの通り、発泡ウレタン断熱材は絶対に透湿防水シートに直接吹付けをしてはいけません。そこまでして行なうコストダウンは「やってはいけないコストダウン」だと私は思っています。

ちなみに通気層の不良で結露を起こして家が腐った場合、その責任を住宅会社に問えるかは非常に難しいラインです。住宅の瑕疵担保責任保険には「結露による損傷は瑕疵と認めない」と定義されているためです。つまりは、そういう怪しげな施工をする住宅会社を選んだ施主自身が、自ら責任を持たなければならないという意味でもあるのです。だからこそしっかりと正しい知識を身につけていただき、自ら良し悪しを判断できる目を養っていただければと思っています。

 




紀南地方でもっとも古くから高気密高断熱住宅を手掛けてきた弊社の強みは、このように高水準な数値を安定的に出すことができる点です。

気密数値を語る場合、この「安定したクオリティ」が非常に重要なポイントとなります。1邸1邸の数値が安定しないようでは、お客様によっては「ハズレ」を引く可能性があるためです。

なお、数値性能だけが良くても「=体感性能も良い」という訳ではありませんので注意が必要です。数値性能と体感性能が比例していない建物はたくさん存在します。

むしろ数値性能は参考までと考え、実際に寒い日・暑い日の見学会に参加して「しっかり性能を体感できる」ことが大切です。

今後もまた報告をアップしていきたいと思います。

 

 


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